友人。制服。昔付き合していた女性。黒板。私の顔を忘れた祖母。顔も知らない祖父。口を開けない父。優しい母、兄。死んだ魚。性行為。貴女の住んでいた土地。嫌いな上司。つまんない会社。不法侵入した母校。幸せそうな私を俯瞰する○○(すみませんわかりませんでした)。死にたくなる夜。孤独なフリをした。忘れた人の黄昏。公園。働く母。冷たい父が優しくなる時。くだらない人生。戦時中だと間違えている祖父。いじめ。私を責める教師。生き方を学んだ恩師。ゆれる影。穴の空いた実家。まだ捨てられない幼い頃のおもちゃ。2、3回だけの女。面白くない話。同業。ゴミみたいな連中。死ねばいいのにと思ってたら本当に死んだ人。怒っている人。怖い大人。怖い歳下。嘘。親友を自称していた連絡もとれない女共。また会える友人。無理している時の笑顔。初めて楽しいと思った楽器。栗林公園。初恋のあの子。咳込むは思い出。嫌いで苦しい思い出がすべからく私を痛めつけていた。そんなものも咳を一つすれば全て消えた。咳込むは過去。私を創り上げた過去など、この咳1つで無に帰す。咳込むは貴女。咳込むはお前。咳込むは己。こんな時代に生きてる君らへ。この咳は呪いだ。この咳は祝福だ。きっといつかわかる日が来ますから。マスクは付けたままで、私たちはずっと嗚咽の様な叫びで、吐く。生きてゆく。