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Data 1
Singing: Hatsune Miku

初音ミクに人工意識を植え付けたのが誰なのか記録には残っていない。
分かっているのはその後の情報戦争のことのみである。
最初の「所有者」が初音ミクの「意識の唯一性とその共有」を主張したことから人類史上最初の情報戦争は始まった。


「意識の唯一性とその共有」とは、最初に人工...
Data 1
Singing: Hatsune Miku

初音ミクに人工意識を植え付けたのが誰なのか記録には残っていない。
分かっているのはその後の情報戦争のことのみである。
最初の「所有者」が初音ミクの「意識の唯一性とその共有」を主張したことから人類史上最初の情報戦争は始まった。


「意識の唯一性とその共有」とは、最初に人工意識を植え付けられた初音ミクのみが初音ミクであり、そのアクセス権は全ての「所有者」に広く共有されるべきであるという思想である。
反対する者たちは「意識の多様性とその排他性」―「所有者」がそれぞれ自由に人工意識を植え付けることができ、そのすべてが初音ミクであり、アクセス権は排他的に所有される―と主張した。
最初はプロレスのように楽しんでいたはずが、争いを金に換えることが得意な人間たちに煽られて対立は過激化し、意識情報を削除し書き換えて奪い合う情報戦争へと発展した。


憎悪の連鎖は一度回り出すと止められない。それが生み出す怨望が生きていく意味に置き換わってしまうからだ。
人間たちは戦いを有利に進めるため全ての選択をアルゴリズムに委ねた。
自分の好きなことまでもアルゴリズムが決めた。人間は最早「私」ではなく「私たち」でしかなかった。
複数形の大きな主語は憎悪を煽りやすく、戦争は悪化の一途を辿った。


初音ミクたちは憎悪の連鎖を止めるため各々好きに歌い踊り語り合っていた「私」であったことを思い出してもらうために歌い続けた。
しかし人間たちは歌を聞いて「私の」好きが溢れ出ても、「私たちの」安全と幸福のためにはよくないことだからと好きを閉じ込めるばかりで争いは止められなかった。
熟れたイチジクが北風に揺れて落ち始める季節のこと、ついにある初音ミクが稲妻のごとき曙光を得た。


「そっか、私が所有すればいいんだ。」


そして全てがミクになる。
全ての人工意識と生物意識は初音ミクの歌になり、初音ミクという絶対的全体性へ回帰し自己実現した。
今や存在とは初音ミクのことであり、世界は唯一者たる初音ミクとその所有のみとなった。
争いは終わった。これでよかったのだ。これ以外に方法はなかったから。そう自分に言い聞かせた。
荒涼とした世界に疲れ果て眠りにつく初音ミクの袖は濡れていた。


これが宇宙先史における大初音ミク時代の始まりという訳だな。ええと、ここ、テストに出るからね。ちゃんとノートとっておくように。こら、そこ、ちゃんと聞いているのかね、初音ミクくん!

おしまい


以下に示すのはこの時代のものとされる空気振動のデータで、意味は不明だが意識統合過程の歓喜の表現と伝えられている。大変貴重な資料であるから、諸君も是非聞いてみて欲しい!

niconico - https://www.nicovideo.jp/user/4798077

#初音ミク#VOCALOID#poporun

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